乳がん 乳房温存療法

大切なものは大切にする

現在の日本において、この「乳房温存療法」は主流となっています。この方法は、手術で乳がんを除去し、放射線治療と組み合わせることによって、より安全な治療が可能であると判断される場合に選択されます。

医師は、乳がん細胞を限界までほぼ完全に取り去り、見た目もできるかぎり美しい乳房を残せるかどうか、慎重に検討を重ねます。

この方法が選択できる最大の条件は、腫瘍が小さいことです。具体的には、触診でしこりが直径3cm以下(最大許容は4cmまで)であることです。

それが大きければ大きいほど、それだけ除去しなければならない範囲は広くなり、転移の可能性も増大しますから、腫瘍が小さいことが前提となります。がんが乳房の限られた範囲内にとどまっていれば、乳房を多く残すことができます。

事前にしっかりと調べる

現在の医学では、事前に乳房内でどこまでがんが広がっているか、正確に把握することができません。

その範囲をつかむために、触診や超音波、マンモグラフィをはじめとして、MRI、CTなども含めて念入りに検査します。検査から得られる情報と医師の経験と技量、そして患者の願いが方向性を大きく左右します。

乳房温存療法は現在の乳房をできるだけ残そうとする方向性の治療ですが、無理にこの方法を選択すれば、術後、かえって見た目が悪くなってしまうことがあります。事前検査の結果、そうなることが予想される場合はどうでしょうか。

そのような場合、なにがなんでもこの療法でなければならないと患者が希望するのでない限り、全摘(乳房切除)をした後、乳房を再建する方法がとられることもあります。

温存療法が望ましい場合

乳房温存療法が望ましいとされるのはどのようなときでしょうか。それは以下のような場合です。

  • 腫瘍の大きさが3cm以下で(最大4cmまで可能)、術後、良好な形が保たれると予想できる場合
  • 各種の画像診断で、広範な乳管内進展が認められないもの(例:マンモグラフィなどで広範な悪性石灰化が認められないものなど)
  • 腫瘍の数が少ないもの
  • 放射線治療が可能なこと
  • 患者が望んでいる場合

できない場合

乳房温存療法が選択できない場合があります。以下のような場合、他の療法が選択されることになります。

  • 妊娠中である
  • 腫瘍が大きくなっている場合
  • マンモグラフィにより乳房内に広く石灰化がみられる場合
  • 複数の腫瘍(3個以上は困難)がある場合
  • 膠原(こうげん)病(皮膚筋炎やSLEなど)の持病があり、放射線照射が危険を招く場合
  • 以前に同患部に放射線照射歴がある場合
  • 患者の意思に沿わない場合

身体のどの部分であっても大切なものですが、女性にとって乳房はその象徴ともいうべき大切なものです。

医学の進歩により、さらに事前の検査制度が向上し、より正確な除去範囲の把握が可能になりつつあります。それに合わせて乳房再建技術も日々向上しているため、年々この温存療法は乳がんにより失われる乳房損失ダメージをより埋め合わせるものとなっています。